(04) 仕事は一人ではできない 元気をもらったり支えたり

コラム「女性管理職が語る」

(2018年12月 日経産業新聞コラム欄「女性管理職が語る」への寄稿)

初めて管理職になったのは、支店長の補佐として支店全般の業務を統括するグループのリーダーとしてでした。広い守備範囲に加え、営業推進面は経験が少なく不安でした。上司からは「営業推進については全て自分で決めようとせず、(支店の中の9支社の)各支社長によく相談しながら進め、それ以外はしっかり支社長をサポートしなさい」と言われました。

システム化が進む変革期であったため、気になることがあれば各支社へ行って現場を調査。その後の対応にも積極的に関与し「管理するよりも支援する」という思いと体制で取り組みました。

その結果、各支社長との接点が増え、よく話をしました。各支社長はそれぞれ違うタイプで、お互いの職場の課題などを話し合ううちに「主観、客観、事実」の視点で整理することが自然とできていったように感じます。

議論はいつもにぎやかで真剣でした。勉強の場であり精神面でも支えになっていました。もし一人で抱え込んでいたら、仕事も他のメンバーとの関係もうまくいかず、視野も広がらなかったのではないかと思います。

その後、支社長となりました。日々どう対処すればよいのか、女性支社長が客先や部下に受け入れられるのかと心配でしたが、「私が不安がっていては支社のメンバーはもっと不安になる」と感じ、覚悟がきまりました。「逃げずに一つ一つ考え解決することが大事」と吹っ切れたのです。判断に迷えば、社内の人に相談し、また社外の方々にヒントをいただきながら、一つ一つ乗り越えることができました。

マネジメントについては誰かのまねをしても、しっくりいかずに悩みました。結局、自分らしく、まずはメンバーの課題を自分のこととして捉え、一緒に考えること。そしてメンバー全員で目指すゴールを共有し、一人ひとりのチャレンジを後押ししながら、個人の成長とチーム力につなげていくことに注力しました。

ちょうど当社で女性がその強みを生かして営業として役割を広げはじめた時代でした。不安を抱えた女性たちに「大丈夫!」といつも言っていた気がします。彼女たちの頑張る姿に、新しい仕事に不安を抱えて悪戦苦闘していた自分を重ねていたのかもしれません。

振り返れば、初心者マークのリーダーだったと反省しきりです。メンバー同士で支え合い、挑戦するチームではあったと思うとともに、落ち込んだ時は皆から元気をもらったことに感謝の気持ちでいっぱいです。

管理職になり突然孤独になったという声を聞くことがありますが、どんな仕事も一人ではできないものです。自分の強みは生かし、経験不足は素直にサポートを得ながら次につなげ、一歩一歩成長できればよいのではないでしょうか。

チームの思いを共有してサポートし合うことで取り組みにスピードが出ます。そして、そのコミュニケーションの中から新たな発想が生まれる、そういうチームが強いと考えています。

子育てや介護なども同じで、家族というチームがあります。一人で悩まない強くて優しいチーム作り、そこから生まれるチーム力を大切にしていきたいと思っています。