(06) 女性活躍、50年の歴史の重み

コラム「女性管理職が語る」

(2019年4月 日経産業新聞コラム欄「女性管理職が語る」への寄稿)

「ビリーブ 未来への大逆転」という映画を見ました。1970年代に起きた史上初の男女平等裁判の実話を基にした内容です。主人公は大学院を優秀な成績で卒業したものの、女性であることを理由に法律事務所へ就職できませんでした。

それから約50年、この裁判をはじめ、多くのチャレンジがあり、現在の「女性活躍」があるのだと改めて感じました。日本では85年に男女雇用機会均等法が制定され、さまざまな取り組みが進みました。

その一方で、いわゆるオールド・ボーイズ・ネットワーク(長い間、男性中心社会であった企業内で培われてきた独特の文化や雰囲気)やアンコンシャス・バイアス(女性だから、男性だからという固定観念や無意識の偏見)が今も課題として存在しています。

女性管理職の登用も道半ばです。50年の変遷の話をするのはやぼったいと思われるかもしれませんが、歴史に学ぶことは必要です。映画などもきっかけにして、現状や感じていることを職場で何気なく話題にできれば、気づきがありそうです。

当社では人材育成は「3つのK」が大事だと言っています。上司は部下に「期待して、鍛えて、活躍する機会と場を提供する」です。すると、部下は「こうなりたい」とチャレンジ精神も高まり成長への連鎖が始まります。これに加え、私は特に女性に対する日常の支援・指導の場面で「伝えること、つなげること、タスクブレイクとチーム力」という「3つのT」を大切にしています。

部下に期待しているならば、その内容をはっきり言葉で「伝えること」が大切です。随分昔になりますが、「もうこれ以上はできません」と言う私に、上司は「エキスパンダーって知っている?力を付ける時には多少の負荷をかけるものだ」と言いました。鍛えられていることは理解した気がします。また、産休に入る社員から「上司からゆっくり休んでと言われたが、私は会社から必要とされていないのか」と相談を受けたことがあります。上司は良かれと思ってかけた言葉だと思いますが、やはり期待を言葉にして伝えることは大事です。

「つなげていく」は、目の前にある仕事は何のためのもので、その結果が何につながるのか、目的を明確にし、共有することです。これまで組織の中心にいなかった女性にとって、会社の各組織の仕事がどう関連しあっているのか、改めて教えてもらえることは大変助けにもなります

また、特に新たな課題に向かう時には「タスクブレイク」の習慣が人事です。ステップやプロセスが整理できれば、どこが不安か、どこができないかなど、おのずと見えてきます。独りで抱え込まずチームで解決する、パスを出しながらチームでゴールする「チーム力」は、スピードが求められる時代には有効であり、「協働」は女性の強みの一つだと思います。

令和という新しい時代に、女性としても上司としても、少しの勇気を持ってチャレンジしていきたいと気持ちを新たにしています。若い皆さんには50年の変遷はピンとこないかもしれませんが、新しい時代を創っていってほしいと思います。