(08) 仕事に大きいも小さいもない

コラム「女性管理職が語る」

(2019年 月 日経産業新聞コラム欄「女性管理職が語る」への寄稿)

女性メンバーの懇談会で「キャリアビジョンはどう考え、何をすればいいのか」という質問がよく出ます。これについて改めて考えてみます。

私が20〜30代の頃はそんなことを考える時代ではなかったので、実はこの質問にいつも戸惑い、すっきりと答えにくいと感じます。ただ、私がまず思うのは、今の仕事に積極的に取り組む中で面白くできるかどうかが大事ということです。

「今の仕事は事務系なので面白さなんてないのです」と言われたことがありますが、事務系の仕事にも面白さはあると思います。つまらなくて当然と思い込み、受け身で仕事をすると、脳も活性化しないようです。つまり面白くはなりません。

世の中の多くの先輩たちも、必ずしも華やかな仕事からスタートしていたわけではありません。一つひとつの仕事に積極的に取り組み、しっかりと基礎が鍛えられたことが大事だったという話をよく聞きます。

積極的に取り組むとは「その業務の意味や影響を知ること」「どうしたらもっと生産性が上がるのかを深掘りして工夫すること」「仕事を徹底してやってみるということ」だと思います。

マニュアルに沿った単調そうな仕事でも、その業務に徹底的にこだわっていると、ある日マニュアルの中身に疑問を覚え変更してみたくなることも出てくるわけです。

自分で考えてトライしたことがうまくいき、誰かの役に立っていることを実感すれば、うれしいですよね。その結果、さらに前向きになる、これが「ヤル気スイッチ」です。

このスイッチは誰かが入れてくれるものではなく、自らが入れるものだと思います。そこから仕事の奥行き、広がりが出てきて、課題を察知するアンテナの感度も高くなります。そうして視野が広がると、自分の強みや弱み、好きなこともわかってきて、将来何をしたいのか、そのために何をすべきか、キャリアビジョンを考えられるようになるのだと思います。

もう一つ大切なことは「笑顔」です。最近では「スマイルシンデレラ」の愛称でプロゴルファー渋野日向子さんが話題です。明るい表情が心のヤル気につながっているのではないでしょうか。

仕事との向き合い方について、小説やドラマでもなるほどと感じることが多くあります。少し前では「ランチのアッコちゃん」「花咲舞が黙ってない」、最近では「これは経費で落ちません!」でしょうか。フィクションではありますが、それぞれの登場人物の仕事に対する真摯な姿勢は、意外と自分とも重ねられるのではないでしょうか。

昔、あるドラマの「事件に大きいも小さいもない、事件は事件。それが私の仕事」というセリフに共感したことがあります。一つひとつを積み重ねていくのは私の仕事のベースであり、目指すは積小為大(せきしょういだい)。その思いは、一人ひとりを大切にしてチーム力で取り組む考えにつながっていきました。

キャリアビジョンをどう考えたらよいかわからない。そんな時は、目の前の仕事をよく見てみることから始めてほしいと思います。千里の道も一歩から、自分の背中を自分で押してみる感覚かもしれません。