(09) 思いで導くリーダーシップ

コラム「女性管理職が語る」

(2019年 月 日経産業新聞コラム欄「女性管理職が語る」への寄稿)

管理職一歩手前の女性たちから「管理職としてのリーダーシップの取り方がわからない」という声をよく聞きます。管理職には力強く組織をまとめ上げるイメージが皆にあるようです。

私も男性管理職のやり方を真似てもしっくりいかず悩みましたが、自分をなりにいこうと割り切って、ここまで何とかやってきました。今は組織ごとにメンバー構成も働き方もさまざまですので、リーダーシップのとり方も色々あって当然ではないかと思っています。

また、「この仕事は何のためにやるのか、自分はどうしたいのか」という思いを明確に持ち、懸命に考え発信できる人は役職や年齢に関係なくリーダーシップを発揮しています。皆の思いや考えを実際の行動につなげられる人もそうです。

そして、スピード感ある対応が求められる環境では、部下も指示待ちではお客様のニーズに応えられません。 自ら提案し、メンバー同士で情報共有し、協力して解決することも増えています。

「リーダーシップはこうあるべきだ」というものにこだわらない方がよいと思うのです。大事なことは、まずは自分自身が「その仕事に思い、目的を持っているか」「自分を生かしているか」ではないでしょうか。

そんなイメージが「マイ・インターン」という映画と重なりました。ファッション通販サイトを運営する30歳女性CEO(最高経営責任者)の部下に70歳の男性インターンが配属される話です。

この映画でなるほどと思ったことの一つは、各自の仕事に対する強い思いです。女性CEOは何がお客様に喜んでもらえるのかにこだわり、自ら行動します。その思いと行動力に周囲が引き込まれていくのです。

シニアインターンは定年後の再就職ですが、仕事が大好きで、新たな世界にも「行動あるのみ」とチャレンジします。CEOをはじめメンバーとフラットな感覚で接し、周囲が気づいていないことには丁寧かつ明快にアドバイスします。多くの経験あってこその強みであり、それを発揮できることもさすがです。

もう一つの気づきは、お互いを生かし合い素直に交流するフラットな職場はやはりすてきだということです。シ ニアインターンの心のこもった仕事ぶりで職場での存在感は増し、彼からのさりげないアドバイスで女性CE0自身も成長します。

映画を通して、リーダーシップは管理職の役割として捉えるのではなく、お互いが助け合って良い仕事、ゴールを目指していくこと、形ではなく信頼関係、チーム作りの中で発揮されていくものだと感じました。

女性の皆さんには日々仕事をする中で、多くの人と交流し、経験や思いを積み重ね、自分にとっての仕事の目的を創り、チームで仕事をやり遂げる楽しさを知ってほしいと思います。メンバー一人ひとりの個性、強み、弱みを受け止め生かし合うリーダーシップの発揮にもつながります。

チームといえば、ラグビーワールドカップでの「ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン」の感動を思い出します。私たちもそんなチーム作りに挑み、そのためのリーダーシップ発揮を目指していきたいですね。