(12) お節介なくらい新人指導を

コラム「女性管理職が語る」

(2020年6月 日経産業新聞コラム欄「女性管理職が語る」への寄稿)

先輩が仕事に熱中するあまり後輩からの質問を受け付けない雰囲気になる「聞かないでオーラ出てますよ」という内容を前回寄稿したところ、双方の立場から共感の声が届きました。今回もこのテーマで書いてみます。

まずは「聞かないでオーラ」がなぜ出てしまうのか。「自分が新人の時には丁寧に教えてもらっていない」「自分で考えることが成長には必要」ということが理由のようです。その通りですが、新人のうちは、とことん考えて答えを出す案件はほとんどありません。

システム化が進み、一層のスピード感も求められています。「自分たちは苦労しながら覚えてきた」という思いは横に置き、現実的に捉えて、効率的な指導を心がけてほしいと思います。

まず解決を支援する、その過程で何がわかっていないのか、なぜそこでつまずくのかといった原因や背景を把握する。そして後日改めて、その業務の意味を指導することです。先輩たちの少しお節介なくらいのコミュニケーションが新人の成長のチャンスとなります。

新人の皆さんは実務に取り組む中でわからないことが多く出てくると思いますが、これは当然と受け止め、1年間は遠慮なく先輩に相談してください。それも仕事のうちです。なぜなら皆さんはチームの一員として仕事をするからです。

こんなことを聞くとダメなヤツと思われないかと心配する必要はありません。一人で抱え込んでも答えは出ません。わかったつもりで仕事をするより、わからないことを自覚して一つ一つ解決し、理解を深めることが自身の成長になります。うろ覚えのままではお客様や社内の信頼を得ることはできませんし、来年以降、後輩を支援することができませんね。

昨年のラグビーワールドカップで日本チームの「一人はみんなのために、みんなは一つの目的のために」という言葉が有名になりました。私たちの仕事も同じ、チーム戦です。コミュニケーションも必要、そして一人ひとりが強い選手になるトレーニングも必要なのです。何かで困ってどうしよう、という時には思い出してください。

コロナ禍でテレワークも進みました。先輩の姿が見えないので聞かないでオーラを感じることはありませんが、その分遠慮なく相談できていますか。対面より電話、メールやチャットを使う方が聞きやすいでしょうか。年代によって、縦横の関係によっても差があるようですが、顔が見えず、距離がある分、遠慮するケースも多そうです。

実際は、スケジュールやタスクを共有する工夫やビデオ会議などでメンバーの動きに関心を持つようになったり、会議が減った分、上司から個々に遠隔での打ち合わせをセットしたりするなど、意識してコミュニケーションする機会を増やしているようです。

ただ、近くにいれば、困っている気配を感じ取ることや、「人のふり見て我がふり直せ」という気づきもありますが、テレワークでは難しいところです。今後は出社とテレワークの組み合わせが標準となるでしょう。それぞれの長短所を理解し、人の力とデジタル活用のベストミックスをつくっていきたいと思います。