(21) やりたくない仕事を深堀り

コラム「女性管理職が語る」

(2022年4月 日経産業新聞コラム欄「女性管理職が語る」への寄稿)

東京・丸の内にある当社本店ビルの建て替えが間もなく始まります。私が本店ビルで勤務したのは累計十数年間ですが、時の流れを感じ、昔のことを思い出しました。

20代の頃、ある仕事に思い切って手を挙げたところ、「それは他のメンバーにやってもらうから」と上司にあっさり言われ、がっかりしたことがあります。逆に、思いもよらぬ仕事を任されて戸惑ったこともあります。

過ぎてみれば、仕事の意味を上司や先輩がかみ砕いて数えてくれ、自分がやりたいとは思っていなかった仕事との出会いが成長につながりました。多くの多くの人に支えられたことに改めて感謝の気持ちでいっぱいです。

そういう思いも背景にメンバーとの会話の中で最近よく聞くのは、「やりたい仕事」と「やりたくない仕事」です。

「やりたくない仕事」はネガティブに聞こえるので言いにくいかもしれませんが、理由を深堀りすると、その仕事の意味や目的が、本人の中で見えていないケースが多くあるようです。それらを整理し、明確にすることで、やり方に工夫も出てくるでしょう。

そこから、仕事そのものを見直すヒントも多く見つかるように感じます。今も本当に価値がある業務なのか、役に立っているのか、お客様の視点で検証すると改善できることがありそうです。

一方、「やりたい仕事」は皆の参考にもなるようにどんどん発信してほしいところです。なぜやりたいのか、何のための仕事でどうしたらうまくできるのか、皆で考える機会は楽しく、一層アイデアが湧いてきます。

さて、メンバーの挑戦をどう支援するのか、ここはマネージャーの知恵と経験、人脈などの見せどころです。その一つが業務の断捨離です。やることより、やめることを決める方が難しいからです。断捨離はただやめるのではなく、本当に大切なことを明確にする作業です。それを一緒に見極めるのはマネージャーの大事な役割であり、メンバーを支援するポイントではないでしょうか。

ところで、春は人事異動の季節でもあり、業務の引き継ぎで違和感を覚えることもあると思います。目的は同じはずなのに、やり方の違いや業務の要・不要の判断の差など「あれ?」と疑問に思うことも多いものです。

職場に慣れないうちはこの違和感を飲み込んでしまうこともあるようですが、これはもったいないことです。慣れてしまうと改善のチャンスを失いがちです。異動や担当変更は業務見直しのチャンスと意識して、発信する勇気と受け止める度量が欲しいところです。

ダイバーシティ&インクルージョン(互いに多様性を受け入れ生かし合う)の時代、もっとメンバーの本音に触れ、各自がやりたいことに情熱を持って取り組めるよう、一緒に考え支援することが、メンバーだけでなく組織を強くしていくことにもつながります。そのために断捨離で時間を創出することも重要です。

それは企業のパーパス、成長を実現していくことでもあります。会社の目指す方向を示しながら、自分の業務がそれとどのように連動しているのか、社会と関わっているのかを伝え、支援していきたいと思います。