(14) 上司の覚悟が女性を伸ばす

コラム「女性管理職が語る」

(2020年 月 日経産業新聞コラム欄「女性管理職が語る」への寄稿)

四国エリア担当として高松に常駐し、仕事や休みを利用して各地を訪れています。お客様や代理店から伺う地元のお話も興昧深いです。 歴史をたどり本を読み、改めてその地に接すると、広がりやつながりも見え、こだわりも出てきます。今見えていることと、歴史や各地域の特性などが自分の知識の中でつながることが一番うれしく、楽しいことかもしれません。

仕事も、目の前の業務がお客様や地域、社会の中でどのようにつながっていくのか、その意義を感じられると、面白くなるのだと思います。

さて、女性活躍推進にはいくつかの面がありますが、男性中心だった業務を女性が担うこともその一つです。その際、男性上司が女性に仕事を任せることに必要以上に不安を感じているように思います。最近 、その心配が実は部下に伝わっていることが問題なのではないかと気が付きました。

部下の女性は上司の不安を感じると、「私では難しいのでは」「迷惑をかけるのでないか」と一層不安に思うものです。社会で頑張っている女性からも「以前は上司の心配を理由にどこかで自分の仕事ではないと逃げていたかもしれない」という声を聞きます。

上司は「この人にこの仕事を任せよう」と考えたら、役割、業務目的、ゴールを明確に示し、本人に成長への期待を伝えるだけで十分と割り切るくらいがよいと思います。

当社の人材育成は3つのK「期待して」「機会を与えて」「鍛える」をベースにしていますが、男性は女性部下を「鍛える」ことに無意識にためらっているように思います。石橋をたたいて渡るよりも、走りながら考え、まずは動き出し、時には手を貸し、共に考えながら育成していくことが理想ではないでしょうか。

鍛えることは、任せることでもありますが、単に突き放すことではありません。必要な時は自分も労を惜しまず寄り添おうとさえ思えば、覚悟も決まってきます。

その上司の覚悟は部下に伝わります。女性は男性以上に「期待に応えようと頑張り、その結果として成長する」特性があると言われます。社内外で活躍する女性の話を聞くと、「自分で自分の限界を決めない」と皆さん、ポジティブです。上司にもそのポジティブさが必要ではないでしょうか。

本人の個性も引き出しながら、困っている部分には手を貸す、そのためにも一層高いコミュニケーション能力を持つことが、上司には求められる時代になったようです。

女性は、経験のないことに踏み出すことを躊躇(ちゅうちょ)しがちです。真面目なだけに「こうあらねば」と考える人が多く、前任者の方法に捉われがちでもあります。自分の強み、協力してくれる上司や仲間、地域の人などとのつながりも生かし、白分なりにやってみてほしいです。仕事に取り組む方法やプロセスはいろいろあってよいのだと思います。

新型コロナ禍でデジタル活用や働き方の変化が加速し、「前から変えたいと思っていたことが、一気に進んだ」という声を多く聞きます。女性自身も新たな業務と自身の成長へのチャレンジについて、少し考え方を変えてみたらどうかなと感じる今日このごろです。