(15) 変化のチャンスを楽しむ

コラム「女性管理職が語る」

(2020年 月 日経産業新聞コラム欄「女性管理職が語る」への寄稿)

コロナ禍でリモート業務が増え、仕事のやり方も大きな変化が求められています。最近、新しい時代の仕事の在り方を考える時、改めて「何のための仕事なのか」「自分たちは一体何をしたいのか」を皆で一つ一つ確認し合い、「やるべき仕事」を決めていくことが必要だと痛感します。

コロナ前も改革に取り組んできました。でも、ここまで環境が変わると「根本的に見直すべきでは」「やめてもいいのでは」といった意見や、続けるにしても「白紙にした上でどのようなやり方が良いのか考えよう」と、より踏み込んだ検討が不可欠となりました。

私が担当する四国ではデジタルツールの活用や業務効率化を進めていますが、若いメンバーが意見を出し、行動するのを頼もしく感じています。例えば、集合形式だった代理店さんとの定期連絡会をオンラインとし、頻度も月に1度2時間だったものを、週に1度15~30分程度に変えました。会の名前をユニークなものにしたり、配信背景を情報番組風にアレンジしたり、そのほかにも様々な工夫をしています。

若いメンバーが普段のデジタル感覚で業務の見直しを加速させていることに感心するとともに、引き続き楽しんで遠慮なくチャレンジしてほしいと思っています。

業務の見直しを加速させていることに感心するとともに、引き続き楽しんで遠慮なくチャレンジしてほしいと思っています。

そうした状況の中でリーダーに必要なことを3つに整理してみました。

1つ目は、私たちがこれまで感じてきた「変化しなければいけない」という義務的な発想ではなく、「変化のチャンスを楽しもう」という前向きな姿勢を自ら持つことです。リーダーがそうなることで、若いメンバーがもっと自由に動き出すことができます。リーダーの中には長年のやり方が定着し、変化に対して無意識な抵抗感を持っている人がいるかもしれないというリスクも認識したいと思います。

2つ目は、組織の目的や使命を全員で繰り返し共有すること、それを忘れないためにシンプルなキーワードで浸透させることです。在宅勤務では周囲の状況が見えず、目の前の業務に集中し、何のための業務かを見失うこともあります。目的を忘れた業務は作業となり、楽しくなく、変革の知恵も湧いてきません。

そして3つ目は、コミュニケーションです。その手段として、もっと電話などで「話をする」ことも大事ではないでしょうか。進捗状況の確認は見える化が進みましたが、時々1~2分くらいの通話をすることで業務の背景や感覚、思いに触れることができます。

ちょっとした声がけで元気や知恵をもらうことも多いのです。メンバーのやりたい気持ちを引き出し、実現に向けて励まそうというリーダーの強い思いなしには改革は成しえません。そうした習慣があれば、 メンバーが本当に困った時も相談しやすくなります。コロナ禍の閉塞感解消の一助になるかもしれません。部下が電話しやすい上司でありたいものです。

丑(うし)年には「結ぶ」「つかむ」の意昧も込められているそうです。「デジタルと人の力のベストミックスによる仕事のやり方改革」にも通じると感じ、一人ひとりの思いをチームカにつなげ、しなやかでたくましい組織にしたいと思います。