(16) 地域社員×転勤族のチーム力

コラム「女性管理職が語る」

(2021年3月 日経産業新聞コラム欄「女性管理職が語る」への寄稿)

四国担当として高松に着任して3年がたち、この地を離れることとなりました。転居を伴う転勤のない一般職として入社した私には、あまりご縁のなかった四国での仕事は新鮮であり、不安でもありました。しかし、各地で人情味あふれる優しさに接し、その不安はすぐに吹き飛びました。

瀬戸内海のきらめきや季節折々で雰囲気が変わる石鎚山系の稜線(りょうせん)に心が洗われ、松山では俳句を詠み、高知では岩崎弥太郎の生家や坂本竜馬の脱藩の道を訪れ、お遍路道では歴史を学び、知らなかったことに数えきれないほど出合いました。

お客様や代理店さんから薦められた名所を訪れ、関連書籍を読み、季節ごとの景色に触れて得た感動は仕事への使命感にもつながっていきました。この四国での経験は私の宝となり、お世話になった皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。

仕事では「四国に安心と安全をお届けし、いざという時のお役に立つ」という思いを皆と共有しながら、オール四国を合言葉にヨコの距離を短くしようと部門間の連携強化に取り組みました。

また、「何のために仕事をしているのか」、会社・組織の役割や使命、個人としてのやりがい、各業務の意味、そしてそれらがどうつながっているかをしっかり考え、メンバー一人ひとり、さらにチームとしても成長するんだという思いを大切にしてきました。

当社には、国内外問わず転勤のあるグローバルコース、転居を伴う転勤のないエリアコース、一定のエリア内で転居を伴う転勤のあるエリアコース・ワイド型があり、エリアコースの人半は女性です。四国での3年間を通じて、生まれ育った土地と過去の取り組みをよく知るエリアコースの社員と、様々な部門や地域で経験を重ねたグローバルコースの社員が強みを生かしあっていくことの価値を改めて感じました。

エリアコースの社員は、地元以外の経験の少なさを自信が持てない理由に挙げることも多いのですが、地域をよく知る強みを生かして今以上にリーダーシップを発揮してもらえばと思います。時に「知っているはずの地域」を鳥瞰(ちょうかん)したり、逆に深掘りしたりして、何が本当の課題か、どうすれば解決するのかをじっくりと考えることで、新たな挑戦も生まれてきます。その過程でグローバルコース社員や他部門の意見を取り入れる感覚も大切です。当然、ぶつかることもあるでしょうが、怖がらなくてもよいのです。双方が目指していることは同じだからです。衝突するからこそ新たな気づきも生まれます。まさにチーム力の発揮であり、ダイバーシティー&インクルージョン(多様性の受容と活用)ではないでしょうか。

同じような立場のエリア限定社員は他の会社にも多いと思います。当社のエリアコース社員を含め、一人ひとりが自らの思いをもとに、丁寧に地域の課題と向き合い、考え、発信していくことが未来を創ることになると信じて、頑張ってほしいと思います。

仕事は様々な出会いとそれらをつなげることで成り立っていく、そんな実感を得ることができた四国勤務でした。