(17) 仕事の目的を問い直す

コラム「女性管理職が語る」

(2021年7月 日経産業新聞コラム欄「女性管理職が語る」への寄稿)

新型コロナウイルス禍で始まった新年度もあっという間に第1四半期が過ぎました。新入社員も異動や担当変更のあった皆さんも業務に慣れてきたころでしょうか。「一つひとつの業務をこなすのが精いっぱい」という声も聞こえてきそうです。

点として向き合っている業務と業務がある時つながって線になり、面としても捉えられる。つまり、所属しているチームとしての仕事の全体像が実感できる瞬間があります。さらにそこに自身の思いや気づきを生かしていくことで仕事が立体化していく、そんな仕事の面白さを知ってもらいたいと、若いメンバーを応援しています。

若い世代には仕事に慣れてきた時だからこそ「この仕事は何のためか」「このやり方でよいのか」という率直な疑問を、先輩や上司にぶつけてほしいと期待しています。若い感性で感じたことには変革への大切なヒントがあるからです。

各種手続きやサービスでデジタルの活用が進んでいます。ただ、何がベストかという感覚は世代によっても異なり、多様化の時代でもあると感じています。例えば「電話での確認」を負担に感じる人がいます。電話での素早い応答が当然の時代に入社した私は、「会社でこんなに電話を使うとは思わなかった」という入社2年目社員の話を聞き、改めて「なるほど」と感じるとともに、負担感に大きな差があると知りました。一方、私が頑張って使おうとしているデジタルツールを当たり前に使っている人も多いわけです。

多様化の時代を考えると、自分たちの思い込みにとらわれず、お客さまに寄り添うことが大事だと痛感します。その意味でも「これは何のための仕事なのか」とフラットに問うことが必要だと改めて思います。

リモート業務も増え、現場リーダーにはきめ細やかなサポートが今まで以上に求められています。コミュニケーションの仕方一つをとっても各自の感覚に差があります。皆を引っ張っていくには、会社やチームの方向性と個々の役割をつなげる説明をわかりやすく行い、リードすることが大事ではないでしょうか。

「目指していることは何か」「今の仕事は目指していることに向かっているのか」「どのように変えていきたいか」をリーダーが問いかけ、皆で議論したり、自ら考えさせたりすることで、一人ひとりの力を引き出していきたいところです。

「なぜやるのか」が共有できるとチームは強くなります。自身の仕事の目的、組織内での役割、ゴールが明確になっているとコミュニケーションも活発化します。

変化への挑戦に失敗することもありますが、コミュニケーションが取れているチームでは変化は仕事の目的を果たすのに必要なこととして共有されています。このため、失敗も成長の糧になると前向きに認識されます。

変革が求められる時代だからこそ、仕事の目的をしっかりと共有し、一人ひとりの考えに寄り添って、変化に対応していける、変化を楽しんでいけるしなやかでたくましいチームを。また、現場力あふれるチームを、さらには化学反応を起こせるチームを、皆で創っていきたいと思います。