(20) 横・斜めの人と言葉を大切に

コラム「女性管理職が語る」

(2022年2月 日経産業新聞コラム欄「女性管理職が語る」への寄稿)

最近、あるテレビ番組がきっかけで、金子みすゞの詩集 を改めて手にし、言葉の持つ優しさと強さに心を動かされました。また、ちょうどその頃、課長クラスの女性社員と開いた社内の交流会「マジきら会」で、彼女らの発言から私も元気をもらい、人の発する言葉を大切にしたいという思いを強くしました。

私が担当するエリアの部長・支店長会議には、女性の課長クラスが交代でオブザーバー参加します。終了後に30分程度、オブザーバーを交え、お互いの部店の取り組みや背景について様々な質問などが飛び交います。ある時、残念ながら時間切れとなり、後日「マジきら会」で続きをすることになったのです。

マジきら会は「真面目な話を気楽にする会」の略です。リモートでの開催でしたが、相互間での質問、 自身の職場での課題や悩みを活発に発信し合い、 ファシリテーター(促進役)も不要の熱い展開となりました。

相手の言葉に共感し、「なるほど、それならこれはどうか」と無理に結論を出さず、話を広げていくのは女性脳の得意とするところでしょうか。「yes、but」ではなく、自然と「yes、and」が実践され盛り上がっていきます。

「yes、and」コミュニケーションは仲間の内なる能力を引き出すと言われます。言葉のキャッチボールで皆の考えや思いが整理され、自信にもつながります。横の関わりが生産性を上げる新たな働き方となり、一人ひとりの力が一層発揮されると感じました。

一方、組織では縦割りで仕事が進み、お互いの言葉が聞こえにくいものです。私は、横や斜めの交流がもっと円滑になり、個人の活動や課題について様々なメンバーとつながりながら進められる環境が大切だと思っています。具体的には、メンバーがやってみたいことを有期のプロジェクト化し、縦ラインの日常業務と並行して横ラインのチームで施策を動かしていくというイメージです。

上司の役割は、誰もが横・斜めのコミュニケーションが取れる機会を作り、その動きを見守ることです。部下が他のリーダーに相談することも良しとするくらいの度量も持ちたいと、自分にも言い聞かせています。

リーダーたちが自らの経験や持ち味を生かし、誰とでも気軽に言葉を交わし、意見交換すれば、社内の連携は自然と活発化していきます。こうした簡車そうで意外とできていないことを実現するには、上司たち自身が率先して取り組む必要があります。上司たちのそうした行動を見ることでメンバーは安心して横・斜めの人と言葉を交わすようになると思います。

組織を越えた交流で専門性や経験、思考の違いに触れ、その違いを生かし合うことが、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性を受け入れ、生かし合う)の実践にもなります。良い刺激を与え合い、人の言葉の暖かみを感じる中で自ら成長する場になるでしょう。

「鈴と、小烏と、それから私、みんなちがって、みんないい。」。このみすゞの詩の一節にも励まされながら、自由におおらかなコミュニケーションで、優しくしなやかでたくましいチームを作っていきたいと思います。