(23) 映画の中のロールモデル

コラム「女性管理職が語る」

(2022年10月 日経産業新聞コラム欄「女性管理職が語る」への寄稿)

爽やかな季節となりました。休日に出かけるのも好きですが、自宅で映画三昧の曰もあります。今回は映画で出会った心に残るリーダーについて話したいと思います。

その一つが、時代劇の「引っ越し大名!」です。現代にも通じる内容と感じ、2回見ました。

主人公は人と接するのが苦手で、友人は書物、お役に付きたいとは思っておらず、書庫番で満足していました。ところが、引っ越しの責任者という想定外の大役を任され、当初は 「絶対無理です」と逃げていたものの、奮闘していく物語です。

この作品を見ていて、女性社員から聞いた 「自分はリーダーを目指していない」「自分には無理」という話と重ねました。自分ができるかどうかは自分ではわからないところもあり、やってみる中で自分の何かが変わったり、力が引き出されていったりすることが多いように思います。

この映画では唯一の友人に背中を押され、仕事を通じて仲間が増えていく、そんな状況もリアルに感じられました。困難な仕事を乗り越えるうちに主人公がいつの間にかリーダーとなり、魅力的になっていきました。

自分のやりたい仕事と懸命に向き合う映画もあります。30代の女性社長とシニアインターンとして入社した70歳の男性、その仲間たちの物語「マイ・インターン」です。

女性社長は疑問に感じたことは自ら確認、実行し、その行動力にメンバーが引き込まれていきます。70歳男性は当初は女性社長にとって苦手な相手でしたが、心のこもった仕事ぶりに職場での存在感は増し、彼からのさりげないアドバイスで女性社長も成長します。

お互いを生かし合い、交流していくフラットな職場がすてきで、まさしくダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂、D&I)でチームができていく過程が楽しめました。

また、1970年代の実話を元にした映画「ビリーブ 未来への大逆転」では、弁護士を目指す女性の葛藤や信念を貫く姿勢に感動しました。

企業がジェンダーギャップ(男女格差)解消に努める一方、女性からはリーダーになるのに悩む声も聞こえます。しかしリーダーになるために仕事をしているのではありません。大切なのは、自分は「どんな仕事をするのか」 「どうやって自分やチームのミッションを果たすのか」「自分は何をしたいのか」です。

それらに真剣に取り組む延長線上にリーダーがあります。 「仕事の幅を広げたい」 「やりたいことに挑戦したい」となると、入る情報が多く裁量権も広いリーダーになりたいと思う方も多いのではないでしょか。

引っ越し大名!」の主人公のように 「武術はまるでダメで本しか読んでいない」ことが生かせたり、 「マイ ・インターン」の社長のように目指すことに挑む過程で意外な人と連携できたり。リーダーヘのステップは人それぞれですが、まずは目の前の役割から逃げないことです。仕事に真摯に向き合う中で仲問ができ、仕事が動き、悩み、工夫を重ねることで人は成長していきます。

秋の夜長、映画の世界で皆さんそれぞれのロールモデルと出会ってみるのはいかがでしょうか。