(25) 一歩ずつ進めば何かがある

コラム「女性管理職が語る」

(2023年3月 日経産業新聞コラム欄「女性管理職が語る」への寄稿)

草木が芽吹き、自然のパワーを感じるこのごろです。新たなスタートを切る季節でもあります。

さて、百貨店のファッションコンサルティング(※)を受けると、自分では買わない服を試せ、新発見があり、映画も友人と見に行くと、自分では選ばない作品と出合い 「意外と良かった」ということがよくあります。自分とは違う人と接すると視野が広がります。

企業でも異動や昇進など変化の時期です。希望と違うこともよくあり、「期待されるのはうれしい。でも大丈夫だろうか」と思う方も少なくないでしょう。しかし、そうした想定外の出合いに向き合うことで、新しい世界が広がっていきます。

それは世の中の働く先輩たちの共通の思いです。先日、女性の役員・役員経験者が企画された未来のリーダー世代に向けたフォーラムで話す機会をいただきました。ご依頼のテーマは「チャレンジと覚悟が道を拓 (ひら)く」です。女性役員・経験者の 「後輩たちに怖がらず一歩を踏み出してほしい」という強い願いが背景にあります。私もとても共感します。

仕事なので、服や映画のような簡単なことではないと言われそうですが、仕事も一つの出合いです。仕事を通して自分の意外な面が引き出されることがあり、それは客観的に見ると想定内ということもあります。

多くの先輩たちがそんな経験をされています。だからこそ、後輩に「自分にはできないのでは」というネガティブな思い込みを少しでも減らしてほしい、トライすると必ず何かがあることを伝えたいと思っています。

私も「石橋を叩きすぎて壊さないように」「過ぎればピンチはチャンス」と発信してきました。新たな仕事のオファーがあった時、自分の選択でなくてもぜひ踏み出してみてください。その先に何があるのかを自身で見て感じてほしいのです。

また、ライフイベントなどを機に選択を迫られる場面もあります。会社の様々なキャリア支援制度は自分にはどれも一長一短で不安という声も聞かれます。必ずしも自分の思い通りにはならず、誰かが最善策を探してくれるわけでもありません。自分で情報を集めて、自分にとってベストな道を選ぶことになります。

覚悟を決めて自分で決めるしかないのです。先輩たちは皆、何かを選択してきています。時にプレッシャーやストレスとも向き合いますが、多くの場合、それを乗り越えようとして乗り越えたわけではありません。仕事と徹底的に向き合い、一つひとつ解決しながら前に進み、振り返ると乗り越えていたのです。気が付けば少しずつ強くなっていきます。

そんな思いを込めて、金子みすゞの「このみち」をご紹介します。

このみちのさきには、大きな森があろうよ。/ひとりぼっちの榎(えのき)よ、このみちをゆこうよ。(中略)このみちのさきには、なにかなにかあろうよ。/みんなでみんなでゆこうよ。このみちをゆこうよ。

新たな出合いを大切に、前を向いて一歩一歩進んでみる、時に勇気を持って何かを選びながら。そこには何かがありそうです。そして新しい何かを「創る」ことになると思っています。

松屋銀座のファッションコンサルティングサービス