(02) 後輩育成、指導よりまず支援 現場訪ねて問題つかむ

コラム「女性管理職が語る」

(2018年8月 日経産業新聞コラム欄「女性管理職が語る」への寄稿)

新入社員の皆さんはそろそろ業務にも慣れ、先輩達もホッとされていることでしょう。一方で指導方法で悩みを持つ人もいるかもしれません。私が後輩の指導と支援を担当していた時代を振り返ってみました。

30歳になった頃です。各営業店に1人配置された事務指導員(通称AS)に任命されました。1営業店に10カ所程度ある支社の事務の安定化や新人の育成、事務品質の向上・効率化に向けた課題整理、改善策推進などが役割です。

ASになることで私の業務範囲は大きく広がりました。直属の上司以外の管理職や本社の管理部門との接点が増え、全国にいるASとも交流を持つようになったのです。

研修や勉強会での指導に加え、日常的な照会応答や相談受けがメインです。今のようにパソコンなどはなく、照会や相談の大半は電話でした。回答がかみ合っているのか、内容が本当は理解されていないのではないか。心配は尽きません。

ある時、何が分からなくて何が問題なのかを把握しきれないことがありました。直接聞いた方が早いと思い、支社に出向くと、いくつかの事項が絡んでおり、必ずしもマニュアル通りにはいかないことが分かりました。

人手不足で混乱した支社に出向いて手伝うこともありました。そうした経験を通して、何が起きていて、何が問題なのかは直接見て聞いてみないとわからないと実感しました。「事件は現場で起きている」というドラマのセリフの通り、頻繁に支社に出かけるようになりました。

トラブルが起きている案件について実際に書類などを一緒に見ながら解決する。こういった支援を通じて発生の原因や担当者の理解度、スキル、支社内での連携状況など色々なことが見えてきます。こうなると、受け手側も素直に聴けるため、指導に対する理解が進んでいる手応えを感じられました。「指導よりまずは支援」という私の考え方のスタートです。

本質的な解決や改善には支社長や先輩たちとの状況の共有も大切です。耳の痛いことを伝える時は「改善はチームで取り組む必要がある。これも仕事。勇気を出して」と自分に言い聞かせることも度々でした。

話し合いでは上司と若手メンバーで、考えや期待感、状況などが共有できていないことも多いと気づきました。本社からの指示と支社の受け止め方にギャップがあることも感じ、それらをどうつなげるかが私の大きなテーマとなりました。自分の仕事は「おのおのをつなげること」という思いを強くしたのです。

その後、営業のマネージャーになった時にも、できるだけお客様や現場に出向いて話を聞き、担当者と一緒に考え、支援することを心がけました。現在も「事件は現場で起きている」「指導よりまずは支援」「おのおのをつなげる」という考え方を大切にしています。

今思えば全国のASが集まる研修や会議は楽しみでした。それぞれ環境は違うものの同じ役割を担う仲間として、日ごろの取り組みや悩みを共有し、新たなヒントを得ました。指導役という役割を与えてもらったことは大変ありがたかったと感謝しています。